自分で考えて遊べる玩具で根の強い・世界に通用する人間に

楢井 博さん◎株式会社エド・インター 代表取締役

楢井 博さん◎株式会社エド・インター代表取締役

エド・インターは、木製・布製の知育玩具一筋で商品開発をしている会社。海外生産で良質な木製玩具を低価格で提供するとともに、子どもが自分で考え能動的に遊べる玩具づくりにこだわっています。「世界に通用する人材を育てたいから」と社長の楢井博さん。さて、その真意とは…?

―1987年より知育玩具の企画開発を手がけていますね。

幼児期は何でもすぐに吸収できる、人間形成に重要な時期。その時期に子どもたちに良質な知育玩具を提供し、自分で考えて行動できる人間、世界で通用する人間を育てたいというのが理念です。社名のエド・インターも、Education(教育)と、International(国際的な)に由来します。

―玩具はあくまでも木製・布製にこだわっているとか。

木や布には自然素材ならではのぬくもりがあり、多く触れると子どもの心は安定して豊かに成長するといわれています。

木製の玩具はプラスチックのように細かい細工が施せないので、積み木やパズルなどに代表されるようなシンプルなデザインになりますが、シンプルだからこそ説明書がなくても遊び方が分かるし、また子どもが自由に遊び方を工夫できるのが利点です。また、布の玩具は子どもが投げたりぶつけたりしても怪我の心配がありませんし、軽いので外出の際にも持ち運べます。

私たちは、スイッチを押すと動いたり、キャラクターを配して興味を引くといった“子どもにこびる商品”はつくりません。そういう商品は子どももすぐに飽きてしまいます。自分の手や目、頭や心を使い、積む・並べる・分ける…と能動的に遊べる玩具で遊ぶうちに、子どもはいろいろなことに好奇心を持つようになり、自分で考えて行動や挑戦ができる人間になると思っています。

―生産は海外の工場でおこなっているそうですね。

会社設立当時、木製の知育玩具といえばヨーロッパからの輸入品しかなく高価でした。良質でかつ手ごろな価格で日本の子どもたちに提供したいと考え、海外での生産を選んだのです。現在、中国、タイ、ベトナム、台湾、ドイツなど十数社で生産しています。

―言葉や習慣の違う人たちとのやり取りにご苦労は?

最初は意識の違いもありましたが、いまは日本の品質基準も理解してくれています。仕事での会話は私たちも相手も英語。通訳は介しません。海外の企業の経営者や責任者の間には、グローバルなビジネスの上で英語を話せるのは当然という考えが日本よりも浸透していますね。

―商品の品質・安全管理にはどう対処していますか?

当社の知育玩具はすべて日本やヨーロッパの厳しい製品安全基準をクリアしています。日本玩具協会の安全基準に合格したことを示す「STマーク」や、EU(欧州連合)の法的規制に適合することを示す「CEマーク」が認定されているほか、日本の食品衛生法に基づき、おもちゃに使用された塗料などの安全性も試験で確認されています。

また現地では、出荷前の品質チェックを製造会社ではなく第三者企業に委託しており、チェックの確実性を図っています。玩具分野では珍しい取り組みかもしれませんが、医療機器分野では既におこなわれていることです。第三者のチェックの後、私たちでもチェックしています。

―商品の企画やアイデアはどのように出てくるのですか?

当社では幼児教室も開校しているので、そこで現場のスタッフから「こんな知育玩具がほしい」という声があると、それを参考にデザイン担当者たちが形にしていきます。試作品ができると教室の子どもたちに遊んでみてもらい、反応を見て改良するという繰り返しで、最終的には企画提案から商品化までに1年半はかかりますね。

最近の新商品は、「えほんトイっしょ」シリーズ。絵本を読むことと玩具で遊ぶことを両方楽しみながら学べるのがポイントです。

―商品の選び方や遊び方について何かアドバイスは?

選ぶ際には、子どもがいまできること・何に興味を持っているかを見て選んでほしいですね。遊ばせる際は、子どもが本来とは違う遊び方をしていても無理に修正はせず、子どもの自由な発想を大事にしてあげてください。また、親子や友だち同士で遊ぶと、遊びの中でコミュニケーション力を磨くこともできます。

「たのしいケーキ職人」など、ごっこ遊びができる玩具も社会性や役割意識を育むきっかけになるでしょう。

―それにしても、そもそもなぜ楢井さんは教育分野に関心を持つようになったのでしょう。

中学・高校で良い先生に出会えて、教育がいかに人間形成にとって大切かを自分で感じたからだと思います。先生は「夢は大きく持て」「いつか世界一周してみろ」とも言っていて、私も大学時代には休学して世界一周をしましてね。まず横浜から船に乗り、当時ソ連だったナホトカに渡って、そこからハバロフスクを通ってヨーロッパに入って…と1年半かかりました。

大学卒業後は教育分野へと思ったのですが、もっと世界も見てみたいと貿易関係の会社に勤めました。そこで海外と仕事をするうちに、今度は世界で通用する人材を育てたいと思うようになり、退社して小学生〜高校生対象の学習教室を開設したのですが、子どもたちは小学校6年生くらいになると受験のため、いままでやってきた自分の趣味や野球などもやめて受験勉強に入ってしまうんですよね。それで果たしていいのだろうか、もっと幼児期にいろいろな知育玩具や遊びに触れて、自分の好きなことも大事にしながら学べる子どもになってほしい・そして世界に飛び出してほしいという思いから、いまの事業へと移っていったわけなんです。

―ということは、楢井さんのこれまでの経験がすべて、いまの仕事や理念につながっているわけですね。そんなご自身の目に、いまの子どもたちはどう映りますか。

まず日本に元気がないですね。子どもたちも、周りから物や機会を与えられる環境にいて、自分から積極的に臨む・挑戦する意欲が薄れている気がします。だからこそ、幼児期にどんな玩具でどう遊んだかも、後の人間形成に大きな影響を与えると思うんです。子どもたちには、日本で通用することだけで満足せず、「夢は大きく」と言いたいですね。

―楢井さん自身のこれからの夢は。

日本だけでなく、海外の子どもたちにも当社の知育玩具を楽しんでもらえるようにしたい。もちろん、商品開発のスタンスはこれからもぶれません。根がしっかりと張った植物は、強い風が吹こうと冷たい氷が地表を覆おうと、やがて立派な花を咲かせます。そんな人間を育てる思いで、“楽しみながら覚える・体得できる、根を育てる玩具づくり”に、こだわり続けたいと思います。

<インタビューを終えて〜記者の感想>

「遊んでないで勉強しなさい」と言われて育った人も多いかもしれませんが、「遊ぶ」ということがこれほど重要だったとは…。「能動的に遊べる玩具」にこだわる楢井さんのお話を聞くうちに、いまの世の中にはたくさんの玩具や楽しい物事があふれているけれど、能動的ではなく受動的に楽しむものが増えている気がしてきました。「玩具で遊んでいるようでいて、実は玩具に遊ばれている」なんて状況に子どもを置きたくはないですよね。「遊ぶ」ということの意義と「遊び方」を、私たちは再考する必要がありそうです。

インタビュー:沢見涼子 写真:小橋城

楢井 博さん◎株式会社エド・インター 代表取締役

【プロフィール】
<ならい ひろし>兵庫県生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、貿易関連企業での7年間の勤務を経て、学習教室を開設。1987年に株式会社エド・インターを設立し、0〜5歳の幼児を対象とした幼児教育、および木製・布製の知育玩具の企画開発・輸入を手がけている。2男の父。
株式会社エド・インターのサイト:http://www.ed-inter.co.jp/