「自分で試したい・つくりたい!」深究心を親子で高め合って

内生 将人さん◎株式会社 学研ステイフル 商品部部長 取締役

内生 将人さん◎株式会社 学研ステイフル 商品部部長 取締役

「学研」といえば、小さい頃に本の付録の実験教材や工作などで楽しんだという大人世代は多いでしょう。その付録を単品で商品化するなど、さまざまな教材や知育玩具の開発・販売を手がけているのが「学研ステイフル」。この分野に20年以上携わってきた内生将人さんに、開発にまつわる秘話や思いなどをうかがいました。

―磁石や水の性質、体の不思議などを自分で試して学ぶ「実験図鑑」シリーズなど、たくさんの教材や知育玩具を商品化していますね。

これまで学研の月刊誌「科学」「学習」の付録として好評だったものを、単品で商品化した教材が多いですね。

学研は2010年で創立65周年を迎えるんですが、毎月発行される雑誌とともに付録もどのくらいの数がこの世に送り出されてきたのか、単純計算しただけでも膨大な数になると思います。その数え切れない付録の中からの、商品化というわけです。

最近は、かつて子ども向けとして出した教材を、大人向けとして復刻させた「大人の科学」シリーズも手がけて好評です。値段も当時と同じに設定したりしてるんですよ。子どものときは高価で手が出せなかった商品でも大人になった今なら買える、また、「子どものため」と称して自分のために買ったり、という方もいます。

―付録から始まったものだけではなく、オリジナルから開発した教材や知育玩具もあるんですか?

もちろんあります。たとえば、「パズカ マークとひょうしき」(30頁)は、道路標識やエコマークなど暮らしの中にあるいろいろな標識の意味を、パズルとカードを使って遊びながら楽しく覚える教材です。まずパズルで標識を完成させ、「では、このパズル(標識)の意味は何かな?」と、今度は付属のカードで確認して覚えるというもの。ある日、保育園の先生から、「標識の意味を、子どもたちに楽しく覚えてもらう方法はないかしら」という相談を受けて開発しました。この後、姉妹編「パズル&カード 世界の国旗」(30頁)も発売しました。

また、普段は本で学ぶことを、立体的に学べるようにした商品もあります。例えば「100だま そろばん」(31頁)は、ドリルで学ぶ足し算・引き算と、おはじき遊びの要素を足して、本という2次元の世界でなく3次元の世界で遊びながら学べるようにと意識して開発したものです。

―商品開発の際は、みなさん白衣とか着て、日々研究室にこもっているのかな?と思ったりもするのですが…。

たしかにそういう人もいますね。白衣をどこかから買ってきて着ていたり(笑)。ただ、たまに小学校から実験の実演を依頼されることもあって、そのときは白衣を着て、子どもたちから「博士!」などと喜ばれています。

開発者といっても大学では文系だったという人が多く、かつて学研の教材で遊んだという人も大勢います。かく言う私もそうです。また、最近の開発者は50歳代の人が多く、中には定年後も務める人もいます。その年代の人でないと作れないものもあるんですよ。ただ、一方では大学の研究室と連携しての開発など、新しい試みも始めてはいます。あと、保育園等で試作品を試してもらい、反応を見たりもしますね。

―海外で商品化されているものを、日本版にアレンジして商品化したものもあるとか。

内生 将人さん◎株式会社 学研ステイフル 商品部部長 取締役たとえば、音声の出る地球儀「ワールドグローブ」(30頁)がそうですね。これは付属のペンで地球儀をタッチすると、タッチした国の名や国歌、面積や人口などの情報を声で教えてくれて、とても楽しいんですよ。思わずずっと遊んでいたくなるくらいに。でも、政治情勢などで国名が変わったりすると、そのたびに対応しなければいけないのが大変なんですけどね(笑)。

2010年には冬季五輪がカナダのバンクーバーで、サッカーのワールドカップが南アフリカ共和国であるので、親子で地球儀を指しながら「今度の開催国はどこにあるのかな?」「この対戦国はどんな国だろう」などと楽しんでいただけるといいなと思います。

―商品開発にあたって、日々心がけていることは?

やはり自分で実際に試したり体験したりしながら、楽しく学べるもの、好奇心を育むようなもの、そして親子で一緒に楽しめるものを作りたいと思っています。それが「学研らしさ」であり、また、お客様から求められる「学研ブランド」ではないかとも……。「都道府県かるた」(31頁)「日本歴史人物要点かるた」(31頁)なども、子どもも親も一緒に遊びながら学べるようにと開発したものです。

―実際の製造は、どこでおこなっているんですか?

紙製品だと、やはり技術の高い日本国内ですね。プラスチック製品だと、最近は中国などアジアの国々で作る場合がほとんどです。アジアでも質の良いプラスチック製品を作れるようになったこともありますし、多くの企業が製造拠点を海外に移している今、日本ではもはや対応が難しくなってしまった作業もあるからです。日本の「ものづくり」の技術が衰退していくのではないかと、ちょっと心配になったりはしますね。

―流通事情も変わってきたのでは?

まず、少子化による市場の変化は課題ですね。「大人の科学」を始めた理由の一つもそこにあります。開発の人間は50歳代が多いといいましたが、日本社会がいろいろな意味で高齢化しているのかなという気もします。

―日本のものづくりの原動力となったのは、作り手の好奇心や探究心だとも思いますが、そうした心を育てるような玩具・教材で子どもたちには遊んでほしいですね。

そうだと思います。実際、これまではコンピューターゲームが全盛でしたが、最近はまたアナログの玩具・教材の良さが見直されるようになってきているので、そこに期待はしているんですよ。そして、こうした玩具・教材をより効果的に楽しむ方法は、やはり親子で一緒に遊ぶことかと。子どもが親と遊んでくれる期間は限られています。私の二人の子も、昔はよく一緒に遊んでくれましたが、大きくなった今は……(笑)。今だからできる親子のコミュニケーションを楽しんでほしいですね。

<インタビューを終えて〜記者の感想>

最近、新築された学研の社屋には、これまで商品化された玩具・教材がズラリと展示されているコーナーが。でも、これはほんの一部の展示なのだとか。どれも思わずトライしてみたくなるような教材・玩具ばかりで、個人的には、じしゃくや砂鉄の実験は、昔を思い出してやってみたくなりました。「親子で一緒に遊んでほしい」という内生さんのお話でしたが、お友だち同士が集まったパーティーなどで一緒に楽しむのもよさそう。大人の間でもウケるのでは?

インタビュー:沢見涼子 写真:小橋城

内生 将人さん◎株式会社 学研ステイフル 商品部部長 取締役

【プロフィール】
内生 将人(うちう まさと)。1964年富山県生まれ。大東文化大学経営学部卒業後、学研に入社。トイ・ホビー部門(現・学研ステイフル)に配属され、以後20年以上にわたりこの分野での開発・マーケティング等に携わる。高1・中2の一男・一女の父。
株式会社 学研ステイフルのサイト:http://www.gakkensf.co.jp